2012年8月29日水曜日

流線形/Tokyo Sniper


過去の音楽を踏襲して新しい境地を切り開く。作曲されている方なら皆そうした信念が何処かにあるはずです。
音楽雑誌なんかをめくるとインタビューされているアーティストがあんな音楽を聴いていたとか、影響された曲はこれなんですと答えてることが多く、そうか、この人の音楽のバックボーンにはこれが潜んでいたのかと考えさせられ、アーティスト自身の音楽が以前とは違う捉えられ方ができる経験が多々あると思います。

そうした中で今回はこのアルバム!



流線形はCDバイヤー、レコード蒐集家、作曲家、プロデューサーなど様々肩書き、方面で活躍されているクニモンド瀧口さんのユニット。
前作はバンドとして1stを発売しソフトロック、AORファンを一気に魅了し、オウンユニットとなってからは彼自身がこれまでに影響を受けてきたり、思い入れのある楽曲のテイストを全面に引き出した作品をこのアルバムで連発します。

色んな音楽ファンや固より本人自身が元ネタあてをごっこをすでにしていますが、僕が見つけた中ではドナルド・フェイゲン、スティーリィ・ダン、吉田美奈子、山下達郎、マーヴィン・ゲイ
もかな?
とにかく知っている人たちは思わずニヤリとしかねない遊び心やオマージュが沢山ちりばめられています。3曲目の「レインボー・シー・ライン」なんてもろ吉田美奈子の「レインボー・シティ・ライン」ですもの。




以前、ORANGE RANGEのロコローションがオマージュであるか否かが取沙汰されていましたが、個人的にはそんな話は最初から意識されて作られていると丸わかりで愚問に聞こえました。そんなことも分からないのか!と言うよりは、その部分は目を瞑ってもやれないのか...とぐったり。

そう考えるとこのアルバムは「似せて楽しむ」というクリエイティブを阻害している業界に向けてのアンチテーゼも含まれているのではないか!と勝手に深読みしてしまいそうです。本当はどうなのだかわわかりませんがね。
とにもかくにも、質の高いシティ・ポップが少なくなった昨今の中ではズバ抜けたセンスが光るアーティストなのでこれからも追い続けていこうと思います。

近々では5月に発売された一十三十一さんの「CITY DIVE」のプロデュースもやっておられます。こちらはより80‘s感の強い作品になっていてこれまたニヤり。Tokyo Sniperを聴いてからこのアルバムを聴くのもオススメです!



かずや

2012年8月17日金曜日

Pomplamoose/Hey It's Pomplamoose


CDやレコードにこだわらなくても、軽い気持ちで音楽に触れられる世の中になりました。
ネット配信曲ならば、「あのミュージシャンの新曲出た!うおぉおおお!!!」と上がったテンションそのままにポチッと即購入できるので、CD派の僕も配信の利用が徐々に増えてきてます。

そして、そんな時代の雰囲気に見事に合ったのが、彼らPomplamooseの音楽!!




PomplamooseはヴォーカルのNataly Dawnと楽器全般を担当するJack Conteの2人組インディーバンド。
2003年頃に雛形が出来上がっており、2008年頃から本格的に(とはいえ気楽)に活動しています。
オリジナル曲と、有名曲のカバーを見るからに楽しそうに作っては、コンスタントにYoutubeで発表。
販売形態は基本的にiTunesやAmazonでの配信のみで、さらにはほとんどの曲がYoutubeで聴けてしまうので、もはや買っても買わなくてもご自由に!といった欲の少ない現代的なバンドです。



彼らの音楽を説明しようとするなら、
表現豊かな正統派の歌声。エグいフレーズ。キュートな音色。無骨な演奏。美麗コーラス。気ままに始まり気ままに終わる曲時間…
などといった感じでしょうか。この一見雑多な要素が、見事なバランスで混ざりハマって、今の時代のあらゆる人が「ポップだ!」と思えるようなモノを生み出しています。

オリジナルフルアルバムの形態としては2作目となるこの[Hey It's Pomplamoose]は、少し尖った印象の前作から、コンスタントに発表してきたカバーやオリジナルのシングル曲を経て遊び心と軽妙さを増し、聴きやすさ抜群!ちょっとした気持ちで再生ボタンを押せば、くるくると展開していく「楽しい音楽」に魅せられ、ノリノリになって気づけばもう、全11曲が終わっています。


本人たちが楽しそうに作っているのが伝わってくる微笑ましい音楽。この現代的で普遍的なポップを体験すれば、暑い夏すらも楽しめること受け合いです!!

しんべえ

2012年8月8日水曜日

Tiny Tim/God Bress Tiny Tim


Tiny Tim/God Bress Tiny Tim



レフティのウクレレを弾き、ファルセットとバスの声を使い分ける太い眉の小太りの鷲鼻おじさん。

これだけを見ると一瞬イロモノ?と思えてしまいます。確かに彼はイロモノかもしれませんね。
エキセントリックな表情、クネクネとした動き、長身から飛び出す優しいハイトーンボイス。今回紹介するのは唯一無二のキャラクターでアメリカのモンド・ミュージック界を牽引したタイニー・ティムです。

60年代初頭、映画に出演した事をきっかけにアメリカ中に「あいつは誰だ?」と注目を集めはじめた彼は、エド・サリバン・ショーに出演。68年リプリーズ・レコードからファーストアルバムを発売します。プロデューサーは先日亡くなったキャプテン・ビーフハート、リンゴ・スターなどを手がけた職人、リチャード・ペリー。
売り上げも申し分無く、その年のビートルズのクリスマスレコード(毎年ファンクラブ向けに出していたソノ・シート)では「ゲストを紹介します、タイニー・ティムです!」とジョージに紹介されてしまう位席巻していたそうです。







彼のもうひとつの特徴と言えば演奏する曲のほとんどがカヴァーと言う事です。
主にアメリカの古き良きポップスやミュージカルナンバーをこれまたアメリカンなアレンジが光ります。上に貼付けた"Liveng in the Sunlight Loving in the Moonlight"もバリバリのアメリカン・ポップス!68年当時の一番良いアレンジがされていると個人的に思います。


常にこのオゾマシイ(良い意味で)キャラクターを突き通したティムは60'sモンド・ミュージック界を引っ掻き回したあとロックカヴァーに挑戦したりしながらドサ回りアーティストとしてその後活動します。
96年、マサチューセッツのホールでライブしていたティムは自身の代表曲"Tiptoe Through the Tulips"を歌い終わったあと、心筋梗塞に倒れ運び込まれた病院で亡くなります。

亡くなってから16年が経ち、すっかり皆から忘れられてしまったのでしょうか?
確かにYoutubeのコメント欄には「Who is "Tiny Tim"?」と書かれていたりしますが、確かにフォロワーはいる訳でして去年アメリカ人のジェームス・ワンが監督が製作した"Insidious"という映画で、さらに言えばスポンジボブの第一話でも彼の曲が使われています。
いつの時代も常に「楽しませるキャラクター」を貫き通した彼は言うなれば「隠れた偉大」なのです。

かずや