2012年12月30日日曜日

空気公団/夜はそのまなざしの先に流れる


ちまちまアルバムレビューをあげてきましたが、今回、初めて(わりと)新譜をご紹介。
11/21発売の、このアルバム!!





空気公団は日本のバンド。僕らの前身のブログで彼らの紹介をしたので、こちらも目を通していただけたりすると幸いです。→  http://pom2life.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-ad17.html
全体は癒しの空気を纏いながらも、どこか人を食ったように飄々としている彼らのまさに「和製ロック」的音楽。これまではその性質上、作品ごとに進化していく!というような明らかな変化を起こすようなものではなく、どちらかと言えばその普遍性と、微妙な変化、深まりを聴き手が見つけて楽しむものだったように思います。
その空気公団が「変化」を見せました!他のバンドの音楽性の変化などからしたらそれでも微妙な変化かもしれません。でもこのアルバムを聴いて、僕はひとり興奮してしまいました。ともかく、彼らは変わったのです!




前作[春愁秋思]では録音にここ数年の常連ライブサポートメンバーを迎え、それまでの練りこまれたスタジオ感あるアルバムではなく、ライブ感、バンド感の強いものとなっていました。そして今作は、その発展系と言っていいんじゃないでしょうか!


アルバム作成のためにライブ録音を行い、その「制作過程」をそのままコンサートとして発表。この試み自体もおもしろいですが、最終的に出来上がったものが、単なる企画ものやライブ盤でなく、きちんと活きた作品になっているのがすごい!ライブならではのダイナミックなアレンジに、ピンポイントに効いたスタジオ録音が重なり、とてもとても特別な「空気」を作り出しています。

過去最高にアップテンポな曲が多かったり、今までからは考えられないアツいキメが聴けたり、可笑しさも含んでいたり!と!聴きごたえ十分の名盤が届きました。


しんべえ

2012年11月18日日曜日

Luiz Bonfá/Le Roi de la Bossa Nova (Cristal)


ボサノヴァギターの名手といえばジョアン・ジルベルトやバーデン・パウエルが真っ先に上がります。今回は彼らよりも少し早く、まだボサノヴァという言葉が作られる前から活躍しボサノヴァギターの至高と謳われたルイス・ボンファを紹介します。

ルイス・ボンファの魅力は6本の弦と10本の指から生み出される音の幅広さ。もっと言えば、一台のギターでリズム、ベース、バッキング、メロディを全てやってのけてしまうある意味トンデモな方なのです。とりあえずこちらの動画で自ら説明も行っているので、ご覧下さい。



さて、今回紹介するのはオリジナルアルバムですがブラジル録音ではなく、1962年映画のサントラを録音する為に訪れていたパリでの作品。誰しもが聴いた事のあるカーニヴァルの朝やオルフェのサンバなどは入れず、終始3分弱の長さの安定した曲が並びます。





ボンファ自身の左手のどアップをジャケットが衝撃的ですね。僕もこのジャケットに一目惚れして買った思い出があります。





ここでは絶好調時代であった彼の超絶的ともいえるワザが随所に垣間みれるのですが、そのワザに驕らない非常にクールで渋いものとなっております。アルバム全体を通して彼自身の歌が聴けるのは6曲、あといくつか豪華なバックを従えた曲とギター+パーカッションのシンプルな構成曲等々ひとつのアルバムで色々な演奏と色を聴く事が出来ます。では一曲。




ボサノヴァはよくカフェやおしゃれな雑貨屋でかかっていますね。
確かにボサノヴァの源流から考えればそういった余裕のある場所でかかることは間違っていませんが、"ボサノヴァ=オシャレ"から一回離した部分でこの音がギター一本で鳴っているのかと考えながら聴いてみて下さい。
絶対ボサノヴァという音楽の視野が広がるはずです!!

かずや 

2012年9月17日月曜日

NIAGARA FALLIN' STARS(大滝詠一)/LET'S ONDO AGAIN


夏も終わり。皆さんは今年はお祭りには行きましたか?

行った人も行ってない人も、祭りに想い馳せる時にはこのアルバム!



大滝詠一は「はっぴいえんど」や「A LONG VACATION」で検索をかければ、すぐに分かるような大物音楽家ですが、こちらはその大ヒット作[A LONG VACATION]の前作。本人すら自覚していた売れ行き無視&趣味一直線の音楽の、集大成的なアルバムです。



イントロから自身の素養詰め込みまくり!時代特有のダサさすら相まって、その凄まじい音楽濃度には今聴いても驚異を覚えます。
あくまでシャレに徹した、パロディーやオマージュの連続の娯楽作なのに、シャレで済まされない本気中の本気がダダ漏れ!

クレジットも冗談だらけで読み取るのが大変なんですけども、演奏者も当時の錚々たるミュージシャンが参加してるようで。
おそらく、日本音楽界究極の才能の無駄づかいアルバムと言えるでしょう!!あ、いい意味でですよ!


なんせ濃すぎるので、誰にでもおすすめ!なんてことは言えないのですが…
それでも日本のポップスが好きな方には、ふざけた気持ちででもポップス研究の為でも、一度は聴いてみて頂きたいアルバムです。


しんべえ

2012年8月29日水曜日

流線形/Tokyo Sniper


過去の音楽を踏襲して新しい境地を切り開く。作曲されている方なら皆そうした信念が何処かにあるはずです。
音楽雑誌なんかをめくるとインタビューされているアーティストがあんな音楽を聴いていたとか、影響された曲はこれなんですと答えてることが多く、そうか、この人の音楽のバックボーンにはこれが潜んでいたのかと考えさせられ、アーティスト自身の音楽が以前とは違う捉えられ方ができる経験が多々あると思います。

そうした中で今回はこのアルバム!



流線形はCDバイヤー、レコード蒐集家、作曲家、プロデューサーなど様々肩書き、方面で活躍されているクニモンド瀧口さんのユニット。
前作はバンドとして1stを発売しソフトロック、AORファンを一気に魅了し、オウンユニットとなってからは彼自身がこれまでに影響を受けてきたり、思い入れのある楽曲のテイストを全面に引き出した作品をこのアルバムで連発します。

色んな音楽ファンや固より本人自身が元ネタあてをごっこをすでにしていますが、僕が見つけた中ではドナルド・フェイゲン、スティーリィ・ダン、吉田美奈子、山下達郎、マーヴィン・ゲイ
もかな?
とにかく知っている人たちは思わずニヤリとしかねない遊び心やオマージュが沢山ちりばめられています。3曲目の「レインボー・シー・ライン」なんてもろ吉田美奈子の「レインボー・シティ・ライン」ですもの。




以前、ORANGE RANGEのロコローションがオマージュであるか否かが取沙汰されていましたが、個人的にはそんな話は最初から意識されて作られていると丸わかりで愚問に聞こえました。そんなことも分からないのか!と言うよりは、その部分は目を瞑ってもやれないのか...とぐったり。

そう考えるとこのアルバムは「似せて楽しむ」というクリエイティブを阻害している業界に向けてのアンチテーゼも含まれているのではないか!と勝手に深読みしてしまいそうです。本当はどうなのだかわわかりませんがね。
とにもかくにも、質の高いシティ・ポップが少なくなった昨今の中ではズバ抜けたセンスが光るアーティストなのでこれからも追い続けていこうと思います。

近々では5月に発売された一十三十一さんの「CITY DIVE」のプロデュースもやっておられます。こちらはより80‘s感の強い作品になっていてこれまたニヤり。Tokyo Sniperを聴いてからこのアルバムを聴くのもオススメです!



かずや

2012年8月17日金曜日

Pomplamoose/Hey It's Pomplamoose


CDやレコードにこだわらなくても、軽い気持ちで音楽に触れられる世の中になりました。
ネット配信曲ならば、「あのミュージシャンの新曲出た!うおぉおおお!!!」と上がったテンションそのままにポチッと即購入できるので、CD派の僕も配信の利用が徐々に増えてきてます。

そして、そんな時代の雰囲気に見事に合ったのが、彼らPomplamooseの音楽!!




PomplamooseはヴォーカルのNataly Dawnと楽器全般を担当するJack Conteの2人組インディーバンド。
2003年頃に雛形が出来上がっており、2008年頃から本格的に(とはいえ気楽)に活動しています。
オリジナル曲と、有名曲のカバーを見るからに楽しそうに作っては、コンスタントにYoutubeで発表。
販売形態は基本的にiTunesやAmazonでの配信のみで、さらにはほとんどの曲がYoutubeで聴けてしまうので、もはや買っても買わなくてもご自由に!といった欲の少ない現代的なバンドです。



彼らの音楽を説明しようとするなら、
表現豊かな正統派の歌声。エグいフレーズ。キュートな音色。無骨な演奏。美麗コーラス。気ままに始まり気ままに終わる曲時間…
などといった感じでしょうか。この一見雑多な要素が、見事なバランスで混ざりハマって、今の時代のあらゆる人が「ポップだ!」と思えるようなモノを生み出しています。

オリジナルフルアルバムの形態としては2作目となるこの[Hey It's Pomplamoose]は、少し尖った印象の前作から、コンスタントに発表してきたカバーやオリジナルのシングル曲を経て遊び心と軽妙さを増し、聴きやすさ抜群!ちょっとした気持ちで再生ボタンを押せば、くるくると展開していく「楽しい音楽」に魅せられ、ノリノリになって気づけばもう、全11曲が終わっています。


本人たちが楽しそうに作っているのが伝わってくる微笑ましい音楽。この現代的で普遍的なポップを体験すれば、暑い夏すらも楽しめること受け合いです!!

しんべえ

2012年8月8日水曜日

Tiny Tim/God Bress Tiny Tim


Tiny Tim/God Bress Tiny Tim



レフティのウクレレを弾き、ファルセットとバスの声を使い分ける太い眉の小太りの鷲鼻おじさん。

これだけを見ると一瞬イロモノ?と思えてしまいます。確かに彼はイロモノかもしれませんね。
エキセントリックな表情、クネクネとした動き、長身から飛び出す優しいハイトーンボイス。今回紹介するのは唯一無二のキャラクターでアメリカのモンド・ミュージック界を牽引したタイニー・ティムです。

60年代初頭、映画に出演した事をきっかけにアメリカ中に「あいつは誰だ?」と注目を集めはじめた彼は、エド・サリバン・ショーに出演。68年リプリーズ・レコードからファーストアルバムを発売します。プロデューサーは先日亡くなったキャプテン・ビーフハート、リンゴ・スターなどを手がけた職人、リチャード・ペリー。
売り上げも申し分無く、その年のビートルズのクリスマスレコード(毎年ファンクラブ向けに出していたソノ・シート)では「ゲストを紹介します、タイニー・ティムです!」とジョージに紹介されてしまう位席巻していたそうです。







彼のもうひとつの特徴と言えば演奏する曲のほとんどがカヴァーと言う事です。
主にアメリカの古き良きポップスやミュージカルナンバーをこれまたアメリカンなアレンジが光ります。上に貼付けた"Liveng in the Sunlight Loving in the Moonlight"もバリバリのアメリカン・ポップス!68年当時の一番良いアレンジがされていると個人的に思います。


常にこのオゾマシイ(良い意味で)キャラクターを突き通したティムは60'sモンド・ミュージック界を引っ掻き回したあとロックカヴァーに挑戦したりしながらドサ回りアーティストとしてその後活動します。
96年、マサチューセッツのホールでライブしていたティムは自身の代表曲"Tiptoe Through the Tulips"を歌い終わったあと、心筋梗塞に倒れ運び込まれた病院で亡くなります。

亡くなってから16年が経ち、すっかり皆から忘れられてしまったのでしょうか?
確かにYoutubeのコメント欄には「Who is "Tiny Tim"?」と書かれていたりしますが、確かにフォロワーはいる訳でして去年アメリカ人のジェームス・ワンが監督が製作した"Insidious"という映画で、さらに言えばスポンジボブの第一話でも彼の曲が使われています。
いつの時代も常に「楽しませるキャラクター」を貫き通した彼は言うなれば「隠れた偉大」なのです。

かずや